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ぬむめ ブログ

趣味の記録や雑記ブログ

私が生涯聞き続けるだろう10の曲・アルハンブラの思い出

フランシスコ・タレガによる名曲だ。曲名は知らなくても、ほとんどの人が聞いた事がある曲ではないだろうか。


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アルハンブラの思い出



アルハンブラの思い出(Recuerdos de la Alhambra)

1896年、近代ギターの父と呼ばれるフランシスコ・タレガの代表作。

アルハンブラ宮殿はスペインのグラナダ地方にある。


伏線

1997年頃、時は世紀末

私が中学生から愛読していた雑誌『YOUNG GUITAR(ヤングギター)』を書店で手に取った。

二十代になり購読をやめていたのだが、「まだあるんだ、懐かしい」と手に取り、パラパラとページをめくると、なんとクラシックギタリスト、村治佳織の特集が組まれていたいのだ。

YOUNG GUITAR(以後ヤングギター)という雑誌は、長年続く正統派ヘビーメタル・ハードロックを扱うエレキギター専門雑誌。時代とともに演奏難易度があがるエレキギターテクニックをリードし、80年代のジャパニーズヘビーメタルを陰で支えてきた雑誌だ。

80年代全盛期に愛読していた方ならわかると思うが、そのようなヘビーメタル雑誌にクラシックギターが特集される事はありえなかった。

なぜなら、70~80年代後半まで、エレキギターは不良の象徴であり、クラシックギターの流れをくみ、ヒッピー文化が生んだフォークソングの主役であるアコースティックギターとは戦争状態であったからだ。



ヤングギターは、80年代全盛期、特集されるギタリストは海外のプレイヤーが多く、数多くのギターヒーローがヤングギターにより日本で知られるようになった。

2~3曲ではあるが、特集されているアーティストの楽曲や関連する曲の楽譜が付いており、インターネットがない時代、ヘビメタ少年の貴重な情報源として君臨し続けた。

ヤングギターがきっかけで聴き始めたアーティストも数多くいた。国内のヘビーメタル・ハードロックのギタリストが紹介される事も多くあり、それ以外の音楽ジャンルだと、チャーや高中正義の特集がたまにあるくらいだった。


その全盛期から20年近くも経っているのだ。ヤングギターが時代の変化で、戦争状態にあったクラシックギターを特集するのも仕方がない、そう思いながら、残念な気持ちで本をそっと置いた。

だが、その認識は間違っていたと気が付いたのは、それより10年ほど後の事だ。


村治佳織の脅威のテクニックと芸術性


2007年頃

私は、たまたま観たテレビで、村治佳織のプレイを初めて観ることになる。

たかだた1~2分の演奏であったが、私の興味を引くには十分な時間だった。クラシックギターでありながら、非常にテクニカルで、長年エレキギターをやっている私が弾くことができない難易度だ。

クラシック音楽の女性プレイヤーはバイオリニストやピアニストが多い印象だったが、クラシックギター界に凄まじいテクニックを持った女性プレイヤーがいるのかと衝撃を受けた。

そして、彼女はとても美しかった。

それほどのテクニックを持った村治佳織が、十年ほど前にヤングギターで特集されていたのは必然だったわけだ。テクニカル志向のヤングギターは間違っておらず、私を裏切ってはいなかった。ヤングギターと私が和解した瞬間である。

70~80年代まであった、エレキvsアコースティック戦争により、私はアコースティックを少し馬鹿にしていた節があり、非常に無知だった。自分でクラシックギターを弾くようになってわかるのだが、エレキギターよりクラシックギターのほうが色んな意味で数倍難しい。その話は別の機会に書きたいと思う。


アルハンブラの思い出』の楽譜と出会う

2008年頃

しばらくはクラシックギターの事を忘れていたのだが、たまたまインターネット上で、アルハンブラの思い出の楽譜と出会う。

楽譜を入手して、一つ目の壁が私を襲った。エレキギタークラシックギターの楽譜の違いである。

エレキギターの楽譜のほとんどはTAB譜(左手で押さえるフレットが数字で記載されている譜面)が使われているのだが、、クラシックギターの譜面の多くは五線譜と少しの指番号のみで記載されている。五線譜で書かれた楽譜を真剣に演奏するなんていうのは、中学生時代に所属していた吹奏楽部以来のことだった。

アルハンブラの思い出』はどこかで聞いた事があったし、譜面も難しい記載はなかったので、それほど時間はかからず解読に成功した。

しかしその後、すぐに別の壁にぶつかることになる。


クラシックギターで思い浮かぶ曲

話は少し変わるが、皆さんはクラシックギターと言えば、一番最初に何の曲を思い浮かべるだろうか?

私は『禁じられた遊び』を思い出す。

クラシック通の方などは、ロドリゴの『アランフェス協奏曲』などだろうが、禁じられた遊びは、開放弦た使ったアルペジオがとても印象的で、エレキギターに限らず、アコースティックギターなどでも、禁じられた遊びの最初のフレーズは弾く事が多いのではないだろうか。

禁じられた遊びは、弦1つに1音、それを続けて弾く『アルペジオ奏法』が使われている。『アルハンブラの思い出』もアルペジオみたいなものだろと私は思っており、楽譜を解読して、すぐに弾けると思っていたが、甘かった。

曲が始まる0.2秒、2つ目の音で、また壁にぶつかる事になる。



トレモノ受難

アルハンブラの思い出』の楽譜の2音目でぶつかる非常に大きな壁、トレモノ奏法である。


エレキギターにもトレモノというのはある。


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上の図の棒を動かせば、「ギュイーン」や「ビロビロ~ン」と音を震わせる事ができる。一般的に『トレモロユニット』と言われている。

インターネットで、アルハンブラの思い出について書かれたサイトに「トレモロ奏法」が難しいと書かれいていたのを思い出した。それを読んだ時に私はエレキギタートレモロと同じような物だと思っており、川平慈英博多華丸・大吉の違い位だろう程度にしか考えてなかった。

だが、実際は石田純一石田純一ほど違っていた。

何を言ってるか、わからないと思うが、安心してほしい、私にもわからない。


トレモロ奏法とは、ギターを弾く右手、親指を除く3~4本の指で(主に人差し指・中指・薬指)一つの弦の同じ音を連続で弾く演奏方法だ。


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上記譜面、一小節目、二音目のドを16分音符で、薬指→中指→人差し指を交互に使って弾くのだ。

親指は下の旋律の伴奏部分を弾く。

アルペジオは複数の弦を弾くので、そちらのほうが難しいように思えるが、同じ弦の同じ音を弾くトレモロ奏法の方が数段難しい。

ギターを弾いた事がない人には、アルペジオトレモロ奏法どちらも難しいと思うが、エレキギターを弾く人は少なからずアルペジオに触れている。だがトレモロ奏法をエレキギターで使う事はほとんどない。あるとすれば、エレキギターを使ってアルハンブラの思い出を弾く時くらいだろう。

ここから毎日の練習の日々が始まる。


その後

トレモロ奏法をひたすら練習し、3か月ほど経った頃くらいには、「それっぽく聞ける」レベルになった。だがトレモロの音はそろっておらず、美しい音色には程遠い。

クラシックギターで、よく言われるのが、左手は職人、右手は芸術家という言葉だ。

フレットを押さえる左手は、職人の正確さが求められ、音を弾く右手は芸術性が求められるというたとえだ。

ただ弾くだけでも難しいのに、芸術性などあるわけがない。

それから『アルハンブラの思い出』を弾く事がライフワークになり、今に至る。


奏者による違い

色んな奏者がアルハンブラの思い出を弾いてCDを出している。独奏なので曲のスピードが違ったり、雰囲気が違ったりと様々だ。

その中でも、私は村治佳織が演奏するアルハンブラの思い出が好きだ。

クラシックは、譜面通りに弾くのは当然のことだが、時代背景も考慮し弾くのが定説だ。作曲者のタレガは男性なのだが、女性である村治佳織アルハンブラの思い出の演奏は、失礼な言い方だが男以上に男らしい。タレガが男らしい演奏をしていたわけではなく、むしろその逆だ。作曲された19世紀はギターの音量が今ほど大きくない為、歴史を考慮するとなると、控えめに演奏するのが一般的だろう。

クレッシェンドやデクレッシェンドが多く使われる曲なのだが、彼女の演奏は、譜面に書かれた以上の力強さや弱さがある。他の奏者より感情的に聞こえるのはそのせいだ。だが、それが嫌だという人が多いのも事実で、好き嫌いの好みが分かれるアーティストの一人だ。

自分でアルハンブラの思い出を弾くと、とてもよくわかるのだが、エモーショナル(エモく)に弾くと実に気持ちがいい曲だ。やはり自分の好きなように弾くのが最高に楽しい。発表会やコンテストなどでは、自由に弾くのは難しいかもしれない。アマチュア演奏家が身の回りの人に聴かせる場合、エモい演奏の方が喜んでくれる事が多いのも興味深い。

曲のトレモロの部分は、「アルハンブラ宮殿の噴水を象徴している」というのをどこかで聞いた事がある。たしかに村治佳織の演奏を聴くと、アルハンブラ宮殿をイメージでき、水が流れる景色が目に浮かんでくる様だ。

私程度の演奏では、トイレについている「乙姫」程度かもしれない。だが、頭の中ではアルハンブラ宮殿の噴水の隣で弾いているイメージで、実に心地よい。


終わりに

アルハンブラの思い出という曲は、前半(イ短調)は非常に暗く、気がめいってしまう為、途中で聞くのを止めてしまう人がいるそうだ。曲の後半(イ長調)は非常に明るい雰囲気になり、その明るさはアルハンブラ宮殿の歴史そのものだ。もし機会があればスペインの歴史や写真を見ながら聞くことをお勧めしたい。 

私は生涯聞き続けるであろうし、自分でも弾き続けるだろう。『アルハンブラの思い出』は本当に素晴らしい曲だ。




以上、ぬむめでした。